アユラー

Ayurra

Ayurra公式ファンクラブ「アユラー」へようこそ♪ 140cmの小柄な体から奏でる、甘く優しい声で、あなたの心をそっと包み込むシンガーソングライター・Ayurra。 琴や和笛の美しい音色を織り交ぜた唯一無二の世界観。 切なくも力強い歌詞、幻想的で心に染み入るメロディー。 痛みや再生、日常の輝きを歌に込めて、まるで物語の中に引き込まれるような体験をお届けします。 ファンクラブ「アユラー」では、Ayurraの日常や想いを、公式サイトでは見られない深さで感じられます。 ここはただのファンクラブじゃない。 Ayurraと一緒に、新しい音楽の世界を創っていく特別な場所です。 癒されたいあなたにぴったりな優しいコミュニティです♡ 今すぐ「アユラー」に入会して、Ayurraの輝く世界をもっと近くで感じてください!

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  • Ayurra

    おつかれさんです。ファンの皆様に、日頃の感謝を込めて~Ayurraのオリジナル小説を、特別に♡【無料】で公開しました🎁

    お試しみたいな感じで楽しんでいってね☺️

    #Ayurraオリジナル小説「妊娠検査薬すら使った事がない」...母が私にくれた”唯一の温もり”とは?


    Ayurraオリジナル小説「妊娠検査薬すら使ったことがない」

    私は母の腹の中にいた頃から、すでに病院の匂いを知っていたのかもしれない。

    母が私を身ごもったとき、彼女は妊娠検査薬など一度も手に取らなかったという。 生理が遅れた朝、母はすぐに祖母に告げた。

    「どうやら身ごもったようですわ」
    祖母はうなずき、すぐに馴染みの産婦人科に電話をかけた。 それから母は、私が産まれるその日まで、ほとんど病院の中にいたらしい。 自分で尿を検査薬にかけるような、みっともない真似はしなかった。 すべて、医師の言葉と白い診察台と、消毒液の匂いに委ねられた。

    私はその話を、二十歳を過ぎたある夜、母から聞いた。 ワイングラスを傾けながら、母は上品に笑った。

    「妊娠検査薬...??あら、そんなもの、使う必要なんてありませんもの。 お医者様に診ていただくのが一番確かですわ」

    その瞬間、私は胸の奥で何かが小さく折れる音を聞いた気がした。

    「人目を気にする余裕すらなく、妊娠検査薬を持って駅のトイレに駆け込んだ」あの日の私と、上品に笑う母は、あまりにも遠すぎて、言葉にならない距離を感じてしまった。

    望まないセックスがもたらした恐怖と焦りで、誰にも言えないまま薬局で買った検査薬を握りしめて、個室のドアに背中を預けて震えながら結果を待つ……あの瞬間の孤独と屈辱は、きれいな診察台の上で医師の言葉だけを信じていられた人には、絶対に想像もつかない。

    母は本当に、美しいお嬢様だった。 白い手は一度も台所仕事をしたことがなく、指先はいつも柔らかく整えられていた。 服は季節ごとに仕立てられ、靴は履き心地の良いものばかり。 彼女の世界は、温室のように閉ざされ、外部の埃や雑多な判断から守られていた。 だから私が生まれた後も、その温室は少しも変わらなかった。

    私が熱を出せば、母は迷わずタクシーを呼んだ。 「病院に行きましょう」
     
    風邪薬のCMを見ても、彼女は首を傾げるだけだった。 「市販の薬なんて、効くのかしら?」
    近所のスーパーで買い物をするときも、母はいつも私に聞いた。 「ねえ、この野菜、どれが新鮮だと思う?」 まだ小学2年生だった私は、必死でラベルを読んで答えた。 母は満足そうに微笑み、「あなたって本当に賢いのね」と言った。

    私は次第に、母の「わからない」を埋める役割を担うようになった。 学校の持ち物リストを読み解き、PTAの連絡事項を説明し、友達との喧嘩の仲裁までした。 母はいつも優しかった。 でもその優しさは、どこか頼りなげで、子供である私を少しずつ大人に変えていった。

    ある雨の夜、私は母に初めて本音をぶつけた。
     「ねえ、お母さん。 私を妊娠したとき、なんで検査薬を使わなかったの? 普通の人はまず自分で確かめるよ」

    母は少し驚いた顔をして、それからいつもの穏やかな笑みを浮かべた。 「だって、確かじゃない方法で不安になるなんて、嫌ですもの。 お医者様にきちんと診ていただいた方が、安心じゃない?」

    私はそのとき、ようやく理解した。 母にとって「不安」は、自分で抱えるものではなかった。 不安はいつも、誰かに預けるものだった。 医師に、祖母に、そして最後には私に。

    私は母の娘として、温室の外の世界を自分で歩くことを学んだ。 安い妊娠検査薬をドラッグストアで買うような、小さな勇気。 体調が悪いときにまず自分で様子を見るという、ささやかな判断。 母が知らなかった、そういう些細な手間と責任を、私は一つずつ積み重ねていった。

    今でも時折、母から電話がかかってくる。
     「ねえ、あなた、最近どう? 何かあったら、すぐに病院に行きなさいよ」

    私は電話の向こうで小さく笑う。
    「大丈夫。 まずは自分で確かめてみるから」

    母はきっと、その言葉の意味を完全に理解していない。

    でも私は、母の知らない風を、ちゃんと胸に感じながら生きている。 温室の中で守られていた母が、私に残してくれた唯一の贈り物は、「自分で生きる」という、静かな反逆だったのかもしれない。

    私は今、母の腹の中にいた頃の消毒液の匂いを、 もうほとんど思い出せなくなっている。
  • Ayurra

    成人を迎えて、間もなかった3年前の夜...私は突然、自分を失った。正確にいうと記憶を失った。

    それが、私にしか作れない歌詞とメロディが産まれたきっかけだった。

    ファンの皆様に、日頃の感謝の気持ちを込めて〜本日の記事は下記のリンクから【無料】で楽しめます🎁

    ### 記憶の空白を越えて ~ウィッグを捨てた夜、私の最初で最後の栄光~

    成人を迎えて、間もなかった3年前の夜...私は突然、自分を失った。正確にいうと記憶を失った。

    都会の街角にある、小さなお店で、キャバ嬢として働いていた私は、いつも「淑やかな私」でいた。 柔らかな微笑みを浮かべ、凛と姿勢を正し、長いカールのウィッグを優雅に揺らしながら、静かなクラシック音楽の流れる小さな店内で、お客様に穏やかで上品な接客を心がけていた。

    誰からも「落ち着いていて、細やかな気遣いのできる、優しいお姉さん」と慕われる、そんな存在だった。

    なのに、あの夜——。

    翌朝、目が覚めた瞬間、世界が音を失った。
    記憶の大部分が真っ白で、頭の中が真っ暗な霧に包まれていた。
    周囲の人たちから次々と告げられた自分の行動に、私は息が止まるほど凍りついた。

    「お客様の膝の上に自分から座り、自分からキスしてた」 「ボクがさ〜!」「ボクがね!」って、男言葉全開でペラペラと喋りまくっていたらしい。

    信じられなかった。
    お淑やかな女の子である私が、急にそんな大胆で過激な行動を取るなんて。

    罪悪感が波のように押し寄せ、胸が激しく締めつけられた。
    吐き気がするほど恥ずかしくて、申し訳なくて、死にたくなるような自己嫌悪に襲われた。

    でも、その夜の私は、強いストレスと疲労の極限で、心が完全に限界を超えていた。

    「厳格なルールに従い、品格のある接客」が求められる、歴史のある小規模店では、常に完璧な笑顔と心遣いを求められる。 毎日少しずつ心を削られ続け、ある瞬間、心が「もう無理だ」と、静かに、でも確かに叫んだ。

    その叫びが、記憶の空白と「もう一人の私」を呼び覚ました。

    体が自分のものじゃないような、奇妙な離人感。 脳を横殴りされたような激しいクラクラ。
    そして突然、抑えていた何かが爆発した。

    私は長いカールのウィッグを乱暴に引き剥がし、 床に叩きつけるように捨てた。
    その下から現れたショートヘアを荒々しくかき上げながら——
    「ボクがさ!」と、まるで別人のように声を張り上げ、お客様の前でボクっ子全開の過激モードに変わっていた。

    淑やかな仮面が剥がれ落ち、
    本当の疲れと叫びを、酒の力も借りて、思い切り吐き出した瞬間だった。

    後でその一部始終を聞かされたときは、激しい自己嫌悪に襲われた。
    店の雰囲気を乱し、周りに迷惑をかけた事実が、重い鎖のように私を縛りつけた。

    でも、不思議なことに——本当に複雑な気持ちでいっぱいだけど——
    あの夜の失態は、思いがけない結果を生んだ。

    ごく一部の「ボクっ子好き」「ショタ(幼い少年)好き」のお客様に強く刺さり、 あの夜の売上は、驚くほど爆上がりした。 その日、私はキャバ嬢としての最初で最後の売上一位を取った。

    酒で記憶を飛ばし、お淑やかな仮面をかなぐり捨てて現れたもう一人の自分が、
    結果として人気を呼んでしまった。

    死にたくなるほどに、自分が情けなくて、申し訳なくて、でもどこかおかしくて。 「結果オーライでいいのかな……」と、今でも胸の内で激しく葛藤が渦巻く。

    それでも、私は自分を全部否定しないことにした。

    あの夜の私は、ただ苦しんでいただけ。
    心が「助けて」と必死にSOSを発した結果、防衛反応のようにコントロールが切れ、
    抑え込んできた「もう一人の私」が飛び出してしまったんだ。

    長いウィッグを捨て、ショートヘアをあらわにした瞬間は、 ただの失態じゃなかった。
    常に周りに気を遣い、お淑やかで真面目な私が、自分を追い込みすぎて壊れそうになったとき、心が自分を守るために出した、痛いほど切実なメッセージだった。

    記憶の空白は、弱さの証ではなく、
    「もう少し優しく自分を扱って」という、自分自身へのSOSだったのかもしれない。

    今も躁鬱病と記憶障害は完治していない。
    それでも、私はここにいる。

    あの夜に失った記憶も、激しい自己嫌悪も、
    ウィッグを捨てて現れたもう一人の私も、
    キャバ嬢としての最初で最後の売上一位という、複雑な栄光も、全部抱きしめて。

    それを音楽に変えることができるのは、私だからこそ。

    同じように心が限界を迎え、
    「もう一人の自分」が出てきてしまった人へ。
    記憶の空白に怯えながら生きている人へ。

    あなたは一人じゃない。
    淑やかな仮面の下で疲れ果てた夜も、
    ウィッグを捨てて叫んだ夜も、
    全部ひっくるめて、あなたはあなたなんだよ。

    あれから3年が経ち、23歳になった私は、子供時代に大好きだった歌を、また歌うようになった。これからも、楽しく、強く、笑顔で歌い続ける。

    過去の痛みは、私を壊したんじゃない。
    私にしか作れない歌詞を、私にしか作れないメロディを、ギフトとしてくれたんだ。
  • Ayurra

    初めまして。シンガーソングライター、モデル、Web作家のAyurraです。

    ファンの皆様に限らず、Ayurraが世の中の全ての皆さんに訴えたいたったひとつの願いを書きました。

    ひとりでも多く受け止めていただけたら幸いです。

    #拡散希望

    🔻【この記事は無料公開です】🔻
    私は19歳の時に知人から性暴力に遭い、初めての子を流産した後に自殺未遂をした。自分の身に何が起こったのかよく分からなかったけれども、とても痛くて苦しくて怖かったのは分かった。誰にも言えなかった。性暴力について知識はなくても、"それ"を人に話すことはとても屈辱的であることは分かっていた。けれどもひとりで抱えたまま生きていくことはできなかった。

    幼い時から喘息を患っていた私は、過呼吸を起こせば命を落とせることを知っていた。だからOD(睡眠薬の大量摂取)をした。これまで知り合った人達とお別れになるのは寂しかった。私は礼儀を示すつもりでネット上に遺書を残したけれど、脳死寸前で助かってしまった。意識も戻った。当時の私は、まだ何も分からない子供だった。好きな男の子と初めて手を繋いだだけで緊張した。だからレイプやセックスや貞操がどういう意味なのかも分からなかった。インターネットで調べて初めてそれが何なのかを知った。

    それからものすごい屈辱感と怒りと悲しみがあった。だから何かに縋る思いで、自分が生きていることをネットで報告したのだと思う。けれども自分に起きたことを全て説明できるほどは回復していなかった。だから様々な誤解を招いたのだと思う。結果、も「売名」「嘘」「証拠出せ」「時系列がおかしい」...様々な非難を浴びた。世間ではそれを(ニ次加害)セカンドレイプというらしい。

    その後、私は夜の世界で傷に傷を重ねた。傷ついた自分を見て、私の言葉が嘘でも売名でもなく、真実であることを信じて欲しかった。でもそうしているうちに、身体は生きているのに心は死んでいった。過去の自分も、兵士としての誇りも、自分の作った音楽でさえ全てがどうでもよくなった。私はお金しか信じなくなった。

    周りにいる性被害者の方々の壮絶な話を聞くと絶句する。私は売られたり回された経験もないし、身体を売ったわけではない。水商売では(表向き)身体を売る必要はない。多くの被害者の方々の声はあまりにも弱くてなかなか届かない。性被害の告白は、血を吐く様な屈辱感と苦痛が伴う。しかしせっかく勇気を出して話しても多くがセカンドレイプや誹謗中傷に晒されて黙ってしまう。

    私は大人になった。今では分かる、あの島に悪魔などいなかったのかもしれない。そこにはただ人がいただけだった。けれども今の私に、どんな優しさも言葉も思い出もいらない。なぜなら私は過去の自分を自らの手で傷つけて殺した。いまの私のたったひとつの願いは、これ以上の被害者を出さないでほしいのです。私を非難した人たちには加害したという意識はないかもしれません。ですが変わってしまった私を見れば、無責任な一言がどんなに人を傷つけるか分かると思います。魂の殺人者はレイプ犯だけではありません。善良な人々によるセカンドレイプこそが最終的に被害者を殺すのです。責めるべきは被害者ではありません。傷ついた被害者に対して優しい世界・・ただそれだけを願っています。

    最後に。今の時代の流れを「怖い時代になった」と言う人も多い。それは、弱い立場の人達が、勇気をもって声を上げる様になったからだと思います。

    おかげで"いなかったこと"にされてきた、虐め、虐待、差別や性暴力...あらゆる暴力に苦しんできた人達が表面化されている。

    私も表現者のひとりとして"暴力反対"を訴え続けます🌸

  • Ayurra

    #オリジナル小説 🏜️砂漠のアーレア・続編🏜️
    数千年前に激動の歴史と、戦場の中を一国の姫として生きた、ある少女の物語。

    【第7章・数千の時を越えて(前編)】

    🎁特別・無料公開🎁
    🔻こちらから無料で試し読みできます🔻

    数千年前、古代中東において最も巨大であったその帝国は、砂嵐と洪水によって滅びた。戦いによって数々の国を支配し、巨大帝国を構築したいった権力でさえ、大災害の脅威には抗えなかった。巨大帝国は、一瞬にして地底の奥深く深くに埋もれてしまった。他国の人々は「これは"姫様の呪い"だ...。」と噂した。

    これは、数千年前に激動の歴史と、戦場の中を一国の姫として生きた、ある少女の物語。

    【第7章・数千の時を越えて(前編)】
    夕方の光の中で、少女は川辺の水に花を浮かべていた。夕陽が、水面(みなも)をきらきらと照らし、薄桃色の睡蓮をゆらゆらと揺らした。少女は、白い肌に、青い瞳という出で立ちをしていた。絹の白いワンピースのみを見に纏い、ウェーブのかかった黒髪には銀の髪飾りが付いていた。銀の腕輪や、首飾り...少女は高価な品ばかりを見に纏っていたが、決して高貴な身分ではない。少女の足元をみれば、彼女が被差別階級であることがすぐに分かった。少女は靴を履いていないのだ。裸足だった。被差別階級の者は、靴を与えてもらえない。奴隷として、遠くに逃げられないようにするためだ。夕陽が沈む前に、帰らなければならない...今日も"ご奉仕"に勤めなければならないのだから。

    夜の帳が降りてくる。長い長い夜が始まる。薄灯の灯った部屋の中、今日も少女はご奉仕に勤める。少女は高級娼婦なのだ。もうこれまでに、何人の客を相手にしてきたのだろう。数えきれない。この場所に来てから、ひたすらに死だけを希望に生きてきた。唯一の安らぎは、小部屋(娼婦や遊女が客をとる部屋のこと)から出て、外出することを許された時間に川辺で水に花を浮かべら遊びをすること、空を見上げることだった。空を仰ぐと、少し死に近づく気がして、身体を弄ばれる苦しみから、解放される気がした。

    しかし、小部屋の中で過ごす長い長い痛みと屈辱にみちた夜は、空すら仰ぐことができない。空さえ仰げないこの苦界で、心の中でひたすらに天国のかけらを探すのだった。

    少女の生まれ故郷は、隣国にある小さな村だった。その国の地中には"数千年前に、砂嵐と洪水によって滅びた巨大帝国"が埋もれているという伝説があった。かつてはいくつもの属国を持つ巨大帝国だったと言い伝えられており、地中を掘れば莫大な資源や富が採掘できるはずであったが、地中を掘ろうとした者はみな不治の病にかかったり、突然死したりした。これは、かつて無実の罪を着せられ、戦場で亡くなった帝国の姫の呪いであると言い伝えられてきた。そして、数千年の時がたった今、かつての巨大帝国は周囲の帝国の属国になるどころか、どの国にも見捨てられた貧国のひとつに成り下がってしまった。

    また、その国では人々が"突然に悪霊に取り憑かれ気がふれてしまう"という恐ろしい病が古くから流行していた。これにかかった者は、元の自分を忘れ、獣のように恐ろしい目つきになり、暴力的になってしまう。また幻覚や妄想が見える様になり、呪いの言葉を吐き続ける様になる。どんな凄腕の祈祷師でも、この病を治すことはできなかった。

    少女の両親も、この病にかかってしまったのだ。愛情に溢れ、優しかった両親は、別人のようになり、獣の様な形相で夜な夜な暴力を振るうようになった。それに耐えかねて、ある日突然に家を逃げ、故郷を捨て、国境を越えて隣国まで逃げてきたのだ。日頃の暴力と、十分な食事も取れないままの長距離移動は過酷だった。この国についた時には、身も心もぼろぼろだった。

    しかし、着の身着のままに国境を越えた逃げてきた少女には、どこにも行くアテがなく、自分の身を売る他に生きる術がなかったのだ。

    「私は幸せにはなれない。この小部屋の中で、搾取されながら残りの生涯を終えるのだわ。」それが少女の口癖だった。しかし、少女の運命は突如変わることとなる...。

    少女と、その青年の出会いは突然のことだった。

    ある日のこと、いつもの様に水に花を浮かべて歌っていたら、青年は少女の目の前に突然に現れた。「美しい歌声に惹かれて、ここまでやってきた。」のだと青年は言った。「駒鳥の様に高音で美しい声。」だと、青年は少女の歌声を褒め讃えた。

    「私に無償で話しかけるなんて、なんて図々しいの。私の足元を見てごらんなさい...私が娼婦だということがお分かりでしょう?私を口説くなら、小屋に来てお金を払ってからにしておくんなし。でもあなたは...見る限り一生をかけてお金を貯めても、私を抱けるだけのお金は貯まらないでしょうね。」いつも、少女が川辺で遊んでいると声をかけてくる道ゆく行商人や、旅人、釣り人に声をかけられては、少女は嫌味ったらしく憎まれ口を叩き、彼らを突っぱねるのだった。

    けれども...青年はそんは男達と何かが違った。色情的な欲を全く感じなかった。これまで数えきれない数の人数に"ご奉仕"してきた彼女の目は、それを簡単に見抜いた。

    その日から毎日のこと、青年は、少女が水に花を浮かべて歌っていると、やってきた。娼婦である少女が外に出ることを許されているのは、夕暮れ時から、夜の帳が降りてくるまでのわずかな時間だ。その僅かな時間、ただただ水に花を浮かべて時間を過ごした。

    寝て起きて、小部屋の中で身体を弄ばれて、毎日がその繰り返し。死ぬよりも痛く苦しい日々の中で、少女は感情を殺し、記憶に蓋をし、ただ何も感じずに生きる様になっていた。

    しかし、青年と少しずつたわいもない会話(それは、好きな花の名を言い合ったり、そばに寄ってくる小鳥を愛でることだった。)を交わす様になり、喜びやささやかな幸せを思い出しては、感情や記憶を少しずつ取り戻す様になっていった。と同時に、日々自分が受けている扱いに対して、大きな悲しみと怒りを覚える様になる。虐待から逃げて、命懸けで国境を越え、ぼろぼろになった心身も癒えぬまま、こうして身体を買われているのだ。まだ10代の少女の悲しみは計り知れない。

    「この人が、私を水揚げ(娼婦や遊女の身を金で買い取り、愛人や妻にすること。)してくれたらいいのに...。けれども私は、高級娼婦であるとはいえ、身体を売っている以上はこの国では被差別階級。この人は私のことを好きになってくれるのかしら。」少女はそんな思いを心に秘めていた。

    青年も同じことを思っていた。けれども彼は、若くして国の中でも一目置かれる優秀な人材でありながら、学者仲間の嫉妬によって学者の身分と財産を奪われ、小さな寺子屋で子供達に学問を教えながら、日銭暮らしをしていた。

    「どうしたの?恥ずかしいの?もっとこっちを見てくださいな。」川辺でふたりで過ごす時間、少女は度々、青年にそう微笑みかける。

    「そばにいながら、あなたを自由にしてあげられないのが悲しくて、悔しくて、あなたを真っ直ぐに見ることができないんだ...学者の身分や財産を奪われていなければ、すぐにでもあなたを水揚げしたのに...。」そんな思いを青年はぐっと飲み込んだ。

    ある日、川辺で青年が少女を探していると、後ろから自分の名を弱々しく呼ぶ少女の声が聞こえた。振り返ると、そこはアザキズだらけの、ボロボロの姿の少女がいた。ドレスと髪を覆うベールには血が滲んでいて、息が乱れ、立っているのもやったという状態で震えていた。小部屋で接待していた客に、酷い暴力を受けたのだという。

    「お願い...私をどこか連れて行って...もうこんなの耐えられない...。」青年の腕にしがみつき、声を詰まらせて泣きながら彼女はそう訴える。

    夕陽が沈みかけ、もうすぐ夜の帳が降りてしまう...少女は空を見上げ、はっと我に帰った顔をすると「もう小部屋に帰らなきゃ。」と青年の腕を離した。

    駆け出そうとした少女の手を、青年はそっと掴む。「僕はあなたといっしょに逃げる。もう誰にも、あなたを傷つけられたくない...。」

    青年は、少女が被っていたベールを外し、その小さな身体を包み込み抱え上げた。少女は歩くこともままなりないほど弱っている。「店番が探しにくる前に逃げよう。遠くへ、遠くへ...夜の帳が降りる前に。」少女を抱き抱えた青年は、夕日の中を駆け抜ける。

    遠くへ、遠くへ...遠くへ。

    次章【第8章・数千の時を越えて(後偏)】更新を楽しみにお待ちください🌙

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